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大阪地方裁判所 平成4年(モ)2555号 決定 1992年7月24日

昭和五五年(ワ)第六三四九号事件原告(以下単に「原告」という)

高橋渡

昭和五五年(ワ)第六三四九号事件原告川崎隆訴訟承継人

(以下単に「原告川崎隆訴訟承継人」という)

川崎藤太郎

昭和五五年(ワ)第六三四九号事件原告(以下単に「原告」という)

田中三夫

昭和五五年(ワ)第六三四九号事件亡丸山清子訴訟承継人兼被告

昭和五八年(ワ)第二〇七〇号事件原告(以下単に「被告」という)

丸山忠

昭和五五年(ワ)第六三四九号事件被告昭和五八年(ワ)第二〇七〇号事件被告(以下単に「被告」という)

主文

一  本件判決の別紙図面の表示中、c点とa点を結ぶ直線及びc点とe点を結ぶ直線によって作られる外角度の表示としての「196°38′48″」との記載部分、e点とc点を結ぶ直線及びe点とf点を結ぶ直線によって作られる外角度の表示としての「186°22′32″」との記載部分を、いずれも削除する。

二  本件判決添付の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のe点の説明を「c点からほぼ南東に22.765メートルの地点で後記f点からほぼ北西に1.331メートルの地点」、同f点の説明を「原告田中方表側の居宅部分の屋根の南西端を通る垂線が地面と交わる地点」とそれぞれ更正する。

三  本件判決添付の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のp点の説明中一行目の「平方な」を「平行な」と更正する。

理由

第一申立の趣旨及び理由

申立の趣旨は主文と同旨、申立の理由は別紙「判決更正決定の申立書」及び同「申立の趣旨訂正の申立書」記載のとおり。

第二当裁判所の判断

一主文一、二項の削除、更正を求める点について

1  民事訴訟法一九四条所定の判決の更正をなしうるためには、判決に違算、書損(誤記)その他これに類する表現上の誤謬があり、かつ、右誤謬が明白であることが必要である。そして、右誤謬が明白であるといえるためには、裁判所が判決において表現しようとしたところ(意思)が明らかであり、これと表現したところ(表示)との間に不一致があることが、判決書並びに訴訟の全過程に現れた資料から判明すれば足りる。さらに、誤謬が訴訟資料から直接判明しなくても、裁判所に顕著な事実又は経験則に照らして推認されるときにも更正は許容されると解される。

2  そこで、このような観点に立って、本件判決に申立人ら主張の各誤謬があるかどうか及び右各誤謬が明白であるといえるかどうかについて検討する。

(一) 本件記録によれば、以下の事実が認められる。

(1) 甲事件原告ら(以下単に「原告ら」という。)は、甲事件において、原告らの各所有地と国有里道との境界は本件判決の別紙図面表示のa、b、c、d、e、f、g、h、i、jの各点(右各点を、以下単に「a点」などという。)を順次直線で結んだ線である旨主張し、右境界線(以下「本件境界線」という。)を前提として、甲事件被告丸山忠(以下単に「被告丸山」という。)に対し原告らの各所有地のうち係争部分についての所有権確認、被告丸山所有物件のうち右係争部分への越境部分等の収去等を求めたものであり、本件判決(関係部分)は、原告ら主張の本件境界線が正当なものであることを認定のうえ、原告らの右各請求の主たる部分を認容したものである。なお、本件判決は、その後控訴、上告を経て、平成四年二月一八日、控訴審において請求の減縮があった部分を除き、そのまま確定している。

(2) ところで、本件境界線を形成するaないしj等の各点の特定に関しては、甲事件の第一審において、原告らの数次にわたる主張の変遷があったが、原告らは、最終的に、c、e、fの各点を次のとおり特定した。

① c点について

c点には、その位置を示す石杭が設置されているので、c点は右石杭により現地に特定されているが、原告らは、昭和五七年四月二六日の第一二回口頭弁論期日において、鑑定人井上直次作成の昭和五六年六月二〇日付鑑定測量図(原告ら及び被告丸山主張の各境界線及びこれらを形成する各点等についての鑑定測量図、以下「鑑定図」という。)に基づいて、c点とa点との距離等を明らかにした。

② e点及びf点について

e点及びf点は、鑑定図にも表示されておらず、かつ、現地においても各地点を明示する石杭等は存在しないため、原告らは、昭和五七年五月三一日の第一三回口頭弁論期日において、f点は「原告田中方表側の居宅部分の屋根の南西端を通る垂線が地面と交わる地点」である旨、また、e点は「c点からほぼ南東に22.765メートルの地点で、f点からほぼ北西に1.331メートルの地点」である旨主張して、右各点の特定をした。

(3) しかし、e点及びf点は右(2)の②記載のとおり特定されるとはいうものの、「原告田中方表側の居宅部分の屋根の南西端」の現状がいつまでも保存されるということを期待することが困難である関係上、右各点を右のとおり特定することについては、いささか不安が残ることから、右各点の特定については、特定ずみのc点から順次角度と距離によりe点及びf点を特定する方法が採用されることになった。そこで、原告らは、右の方法によっても、e点及びf点を特定できるようにするため、昭和五九年九月五日の第二八回口頭弁論期日において、c点とa点を結ぶ直線及びc点とe点を結ぶ直線によって作られる外角度(以下「c点の外角度」という。)を「196°38′48″」、e点とc点を結ぶ直線及びe点とf点を結ぶ直線によって作られる外角度(以下「e点の外角度」という。)を「186°22′32″」とそれぞれ主張し、その立証として<書証番号略>(西側安春作成の各点角度図)を提出した。

(4) 本件判決は、理由中において、e点及びf点が前記(2)の②記載のとおり特定される地点であることを認定したものの、右各点の特定については、右(3)記載の方法を採用のうえ、a点ないしj点等各当事者主張の境界線とこれらを形成する各点の位置関係等を表示する別紙図面中に、<書証番号略>に基づいて、c点の外角度として「196°38′48″」、e点の外角度として「186°22′32″」と表示し、かつ、その添付の「別紙図面に表示の各点の説明」中に、e点の説明として「c点を通る直線でa点とc点とを結ぶ直線に対し、右廻りに一九六度三八分四八秒の角度で交わる直線上を、c点からほぼ南東に22.765メートルの地点」、f点の説明として「e点を通る直線でc点とe点とを結ぶ直線に対し、右廻りで一八六度二二分三二秒の角度で交わる直線上をc点(e点の誤記)からほぼ南東に1.331メートルの地点」とそれぞれ記載して、右各点を特定した。

(5) 本件判決の確定後である平成四年五月、原告らは、被告丸山に対し、本件判決に基づいて被告丸山所有物件中前記越境部分の収去を求めることになったが、その際、被告丸山から、本件判決添付の「別紙図面に表示の各点の説明」中のe点及びf点についての右(4)記載の各説明に基づいて現地に特定される各地点は前記(2)の②記載のとおり特定される原告らの主張のe点及びf点と全く異なるとの指摘があったので、原告らにおいて、一級建築士で<書証番号略>の作成者である西側安春をして、トランシットを使用してc点の外角度を計測させたところ、c点の外角度は「198°29′20″」であったこと、なお、右西側安春が<書証番号略>にc点の外角度として「196°38′48″」との誤った数値を記載したのは、同人がc点の外角度を現実に計測することなく余弦定理を用いて図面上の計測及び計算によりこれを算定した際、同人が図面上の計測を誤ったため、右の誤った数値を得たものであることが判明した。

(二)  右(一)認定の事実によれば、本件判決は、e点及びf点を前記(2)の②記載のとおり現地に特定される地点として理由中に認定したものの、右各点の特定については前記(3)記載の事情から同(3)記載の方法を採用し、同(4)記載のとおり右各点を特定したものであるが、その際、同(5)記載のとおり本件判決が証拠として採用した<書証番号略>のc点の外角度の記載に誤りがあったため、別紙図面に表示中のc点の外角度の記載を誤るとともに、添付の「別紙図面に表示の各点の説明」中に前記(4)記載のとおりe点についての誤った説明記載をして、e点の特定を誤り、ひいては、e点が正しく特定されることを前提とするf点の特定をも同様に誤ったことが明白である。

ところで、前記1説示の観点に立つ場合、c点及びe点の正しい外角度は明白とはいえないから、本件判決がした前記(4)記載の記載等を更正して、前記(3)記載の方法により右各点を特定することは不可能である。

しかし、以上認定説示の事実によれば、e点及びf点を前記(2)の②記載の方法により特定することは可能であり、かつ、本件判決も、前記(3)記載の方法による右各点の特定が不可能な場合には、次善の策として前記(2)の②記載の方法により右各点を特定したであろうことが明らかである。そうとすれば、本件判決は、<書証番号略>記載のc点の外角度の記載が正しいものと誤信したため、前記(2)の②記載のとおり現地に特定されるe点及びf点を特定するに当り、前記(3)記載の方法を採用することとして、前記(4)記載のとおり別紙図面中にc点及びe点の外角度として誤った数値を表示するとともに、この場合、c点の正しい外角度についての証拠資料がない以上前記(3)記載の方法によるe点及びf点の特定が不可能であるから、右各点は前記(2)の②記載の方法により特定するほかないところ、前記(3)記載の方法により右各点を特定できるものと誤信のうえ、本件判決添付の「別紙図面の表示の各点の説明」中に前記(4)記載のとおり右各点についての誤った説明記載をしたものであり、かつ、右各誤謬は、前記1説示の観点からみても、明白であるというべきである。

二主文三項の更正を求める点について

本件記録によれば、判決添付の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のp点の説明中一行目に記載の「平方な」は、その説明自体から、「平行な」の明白な誤記であることが認められる。

三結論

よって、本件申立ては理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官松尾政行 裁判官山垣清正 裁判官明石万起子)

別紙判決更正決定の申立書

申立の趣旨

一、判決の別紙図面の表示中c点を通る直線でa点とc点を結ぶ直線に対し、右回りに「196°38′48″」の角度が表示されている部分は「198°29′20″」の誤りであるので更正する。

二、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のe点の説明中「一九六度三八分四八秒」との記載は「一九八度二九分二〇秒」の誤りであるので更正する。

三、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のp点の説明中「平方な直線上を」とあるのは「平行な直線上を」の誤りであるので更正する。

との決定を求めます。

申立の理由

一、頭書事件は、昭和五九年九月二八日御庁の判決言渡しがあったのであるが、その後、被告丸山忠の控訴により昭和六二年一二月二四日控訴審判決(大阪高等裁判所昭和五九年(ネ)第二〇六四号、同六〇年(ネ)第一八五号)が、控訴人の上告により平成四年二月一八日上告審判決(最高裁判所昭和六三年(オ)第四五〇号)があり、一部を除いて第一審判決どおり確定した(<書証番号略>)。

二、そこで、原告らは確定判決に基づき、境界部分の収去のため代替執行の決定を得たところ(大阪地方裁判所平成四年(ヲ)第五一七九号)(<書証番号略>)、被告丸山は去る五月六日からその所有建物の一部について任意に撤去作業を開始した。ところが、被告丸山は五月一一日に至り判決の別紙図面に記載のc点の外角度(b、c、eの各点を結ぶ外角度)196°38′48″によりe点を実施測量したところ、同判決の別紙図面上のce線とは全く異なるとして、右撤去作業を途中で放棄して止めてしまい、右角度をもとに、判決別紙図面記載の境界線とは異なる位置(里道敷)にブロックを一方的に設置するなどしている(<書証番号略>)。

三、しかし、判決別紙図面のc点の角度196°38′48″は、以下のとおり198°29′20″の明白な誤りである。

1. 判決の認定したところによれば、別紙図面のc点には、原告高橋渡が昭和三九年四月ころに設置した石杭が存する(判決理由中二項6)ので、現場における位置の特定は現時点でも容易である(<書証番号略>)。

又、別紙図面のf点は、原告田中方表側の居宅部分の屋根の南西端をとおる垂線が地面と交わる地点と認定されており(判決理由中二項9)、これも現場における位置の特定が現時点でも可能である(<書証番号略>)

そこで、判決の別紙図面に記載された距離の表示に従い、c点から南東方向へ22.765メートルの直線とf点から北西方向に1.331メートルの直線の交わる点をもってe点とし(<書証番号略>)、c点からf点に向けて、c点の外角度(b、c、eの各点を結ぶ外角度)を平成四年五月一六日現場においてトランシット(測量器)を用いて測量したところ、当該外角度は判決の別紙図面の196°38′48″ではなく198°29′20″と判明したものである(<書証番号略>)。

2. 仮に、判決のとおりc点の外角度を196°38′48″とすると判決別紙図面e点につながらず、e点の外角度(c、e、fの各点を結ぶ外角度)186°22′32″及びf点の外角度(e、f、gの各点を結ぶ外角度)172°42′6″にもつながらず、図面上の境界線とは全く異なり、かつ各点のつながらないとんでもない境界線を認定したこととなり、意味をなさない(<書証番号略>)。又、原告田中の建物内に里道が位置するというありえない結果をもたらす。

右の外角度は現在のe点を図面上に特定する方法の一つとして、方位を確定するために図上計測された数値であって、e点を探索し、創設するための数値でないことは、前記判決の理由の説示(とくに、別紙図面に表示のd点及びe点を結ぶ直線に沿ってトタン塀が設けられているとの説示)からも明らかである(判決理由中2項9)。

3. 逆に、判決のc点の外角度を図面どおり計測し直した198°29′20″とすると、e点の外角度(c、e、fの各点を結ぶ外角度)と矛盾することなく、c点e、fの各点を結ぶ直線は判決別紙図面の境界線どおりとなる(<書証番号略>)。

4. 第一審では、争点整理として里道に関する原告らと被告丸山双方の主張する位置関係を明らかにするため鑑定人井上直次が選任され、原被告とも同人作成の鑑定書に基づき、里道の位置、境界線を主張し、原告らはその後右鑑定図面における主張を昭和四七年四月二六日付準備書面添付図面(<書証番号略>)のとおり訂正変更のうえ主張した。そして、原告らは裁判所の要望により、右添付図面(<書証番号略>)に記載のないc点、e点、f点の各外角度につき各点角度図を<書証番号略>として提出した(<書証番号略>)。

判決は、<書証番号略>のc点の外角度が196°38′48″と記載されてあるのを採用されたものと思われるが、c点外角度を前記のとおり改めて計測し直して見たところ誤りがあり、正確には198°29′20″であることが判明したのである(<書証番号略>)。

因に、判決別紙図面のc点に分度器を当てると約198°と計測でき、別紙図面のc点付近をトレースして改めて図上計算してみると198°29′56″となって、実地測量の結果である198°29′20″と僅か三六秒の違いで一致しているといってよい(<書証番号略>)。

5. 右訴訟経緯よりしても、原告らと被告丸山が鑑定書により双方の主張線を明らかにし、そのうえで、原告らは、各点の外角度を附記したのであるから、判決の別紙図面は外角度の表示よりも表示された直線とこれにより計測された現実の角度を優先すべきものである(<書証番号略>ご参照。すなわち、昭和五七年四月二六日付原告準備書面添付の図面の記載は判決の別紙図面の当事者主張の各境界線と一致するがc点その他の角度の記入はない)。

四、前記の通り、判決別紙図面c点の外角度の記載の誤りが執行の重大な障害となっており、原告らは、これを是正しなければ、折角昭和五五年の提訴以来一〇数年間にわたる訴訟で確定した結果の実現ができない状況にある。もし、原告らが同一境界線の確定を再度別訴で求めるとすると既判力に基づき訴を却下される可能性があり、形式的には新たな争いであるとしても、折角決着したものを単なる誤算を是正するためだけに再訴を提起するのは訴訟経済に著しく反するものである。

よって、原告らとしては原判決に明らかな誤り、違算、矛盾があるものとして更正決定を賜るべきものであると考える。

五、判決の「別紙図面の表示の各点の説明」に記載のp点中「平方な直線上を」との記載は「平行な直線上を」の明らかな誤りである。

六、よって更正決定を賜りたく申立に及んだ。

疎明書類及び添付書類

一、疏甲第一号証 判決書(御庁昭和五五年(ワ)第六三四九号)

同 二号証 判決書(大阪高裁昭和五九年(ネ)第二〇六四号)

同 三号証 判決書(最高裁昭和六三年(オ)第四五〇号)

同 四号証 決定書(御庁平成四年(ヲ)第五一七九号)

同 五号証の一乃至七 現場写真(被告が里道内にブロックを設置した様子など)

同 六号証 陳述書(西側安春)

同 七号証 判決図面をもとにc点の外角度と訂正後の外角度を記載した図面

同 八号証 原告準備書面添付図面(昭和五七年四月二六日付)

同 九号証 甲第二〇号証の書証

同一〇号証 角度計測図及び計算書

二、委任状 四通

別紙申立の趣旨訂正の申立書

新申立の趣旨

一、判決の別紙図面の表示中、c点を通る直線でa点とc点を結ぶ直線に対し、右回りに「196°38′48″」の角度が記載されている部分及びe点を通る直線でc点とe点を結ぶ直線に対し、右回りに「186°22′32″」の角度が記載されている部分は、いずれも削除する。

二、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のe点及びf点の説明をいずれも削除し、別紙のとおり更正する。

三、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のf点の説明中二行目に記載の「c点」は「e点」と、同じくp点の説明中一行目に記載の「平方な」は「平行な」とそれぞれ訂正する。

訂正の理由

一、判決別紙図面のc点の外角度(a、c、e点の各点を結ぶ外角度)が明らかな誤りであることは、申立の理由第三項で述べたとおりである。

そこで、判決によるとc点のほかにf点が別紙のとおり不動の点として特定されること(判決理由中二項9)、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のe点、f点の説明並びに判決別紙図面によればc点とe点間の距離は22.765メートル、e点とf点間の距離は1.331メートルとされていることから、e点はc点の外角度を用いずとも、c点とf点からのそれぞれの距離によって自ら特定されるものである。

すなわち、判決別紙図面に記載のとおり、c点からほぼ南東方向に22.765メートルの地点でf点からほぼ北西方向に1.331メートルの地点をもってe点の位置が決定できる次第である。

そうするとまた、誤ったc点の外角度よりe点を定め、これにより求められたe点の外角度(c、e、f点の各点を結ぶ外角度)の表示「186°22′32″」も誤りと言えるが、f点の特定にe点の外角度の表示を要しないことも右に述べたとおりである。

二、判決の「別紙図面に表示の各点の説明」に記載のf点の説明中二行目末尾の「c点」は「e点」の明らかな誤りであるので、更正を求める。

三、よって、従前の申立の趣旨を訂正追加し、新申立の趣旨記載のとおりの更正決定を求める。

e点 c点からほぼ南東に22.765メートルの地点で後記f点からほぼ北西に1.331メートルの地点

f点 原告田中方表側の居宅部分の屋根の南西端を通る垂線が地面と交わる地点

《参考・抗告審決定》

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一 本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。相手方らの更正決定の申立てを却下する。」というにあり、その理由の要旨は、「原決定は、民事訴訟法一九四条により判決を更正できる範囲を超えて、判決の結論を変更してしまうものである。本件判決(基本事件に対する昭和五九年九月二八日言渡の判決)添付の別紙図面表示のe点、c点は、西側安春が測定した角度に基づいて特定され、同図面のとおりに本件判決が確定したのであるから、西側安春作成の図面に基づいて、右測量値が誤りであってe点等の特定を誤ったとして更正を認めるのは不当である。」というのである。

二 当裁判所の判断

1 当裁判所も、相手方らの本件更正決定の申立ては理由があると判断するものであるが、その理由は原決定の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

2 抗告人は、西側安春が作成したe点、c点の測量値が誤っているとする図面に基づいて、e点等の特定を誤ったとして更正を認めたのは不当である旨主張する。しかしながら、判決確定後に提出された資料を加えることによって、確定判決に明白な誤謬があることが判明した場合にも更正決定をなしうると解するのが相当である。記録に基づいて本件判決の記載内容を検討すると、本件判決が添付した別紙図面表示のe点を「c点からほぼ南東に22.765メートルの地点でf点からほぼ北西に1.331メートルの地点」とする意思で表示されたことは同図面の表示自体から明らかであるし、また、本件判決が同図面表示のf点を「相手方田中方表側の居宅部分の屋根の南西端を通る垂線が地面と交わる地点」とする意思で表示されたこともその理由説示から明らかである。そうすると、本件判決中、a、c、e、fの各点等として示された同図面自体には変更はなく、ただ同図面中のc点、e点の表示部分及び同判決末尾の「別紙図面に表示の各点の説明」のうち、e点、f点の説明部分のc点、e点における外角度の各記載に誤りがあったにすぎないと認められる。したがって、原決定は、本件判決の明白な誤謬を訂正して更正したにすぎず、抗告人主張のように確定判決の実質的な内容を変更するものではないから、抗告人の主張は採用できない。

3 よって、相手方らの本件更正決定の申立てを認容した原決定は相当であって、本件抗告は理由がないので、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

大阪高等裁判所第五民事部

(裁判長裁判官吉田秀文 裁判官弘重一明 裁判官岩田眞)

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